古代アメリカ研究会会報No.18(発行2005年7月)

 大会のアナウンスと発表者募集会員からの投稿『古代アメリカ』の原稿募集新入会員事務局からのお知らせ編集後記

 

 

 大会のアナウンスと発表者募集

2005年度古代アメリカ学会(総会・研究大会)は、2005123()早稲田大学において開催することに決定いたしました。今年度の研究大会は、昨年同様、研究発表、調査速報、ポスターセッションを予定いたしております。発表時間、内容は、以下の通りです。

 

研究発表:30分間。

調査速報:15分間。2005年度の春、夏に行った調査の報告

ポスターセッション:研究大会会場の外でA0(841×1189mm)版のポスター1枚を用いて行う。

 

 発表希望者は、研究発表、調査速報、ポスターセッションのいずれを希望するかを記し、題名と要旨(400時程度)を事務局までe-mail、またはFAXでお送りください。締め切りは、20051014()です。なお当日の発表時間は、発表者数により変更になることがございます。ご了承ください。

 


会員からの投稿

(1)研究紹介

「土器焼成実験の体験で思うこと」

 西澤弘恵(東京大学教養学部文化人類学教務補佐員)

  

ある本のなかに「実験考古学とは考古資料の機能や用途などを確定するために実験的な方法をとる考古学」という説明があった。確かにそれも一つの目的である。土器や石器の機能を実験によって確かめるということは必要でさえある。しかし、実験考古学のもう一つの目的は、「製作技術、その工程」を解明してゆくことでもあると思う。私が土器焼成実験をしてみたいと思った主な動機は後者だった。

最初に土器の野焼きを試したのは2000年の秋だったと思う。この野焼きによる土器焼成に関しては文化人類学教室の考古学実習で行った佐原市石神台遺跡で出土した縄文時代後期の土器と黒色土師器が直接的な関心対象だった。これらの土器がどのようにして製作、焼成された可能性があるのかということと、縄文時代の土器焼成が、どういう環境条件の中で行われるのかが問題設定だった。

そのため、野焼きを行うにあたって大まかに条件を設定した。@燃料を現代で手に入れ易い角材などは使わない。A燃料の多寡を記録する。B焼成温度を記録する。C焼成土器の重量、寸法を記録する。D縄文土器を製作する場合に、自分のオリジナリティーを前面に出すのではなく、なるべく本物をコピーする。そのため、土器の写真を引き延ばして、それを見ながら器形のプロポーションを真似し、施文具を製作し、粘土の配分をする。縄文土器の型式が継続してゆくのは、ある種の文様がある特定位置に施文されてゆくことによって成り立ってゆく。つまり、型式とは模倣の絶え間ない連続である。(だとしたら、毎日使っていた土器を見ながらつくったと思えば良いではないか。)と、前述のような項目を思うと結局実験の有効性は「記録すること」にあるのではないかと思う。

何回か野焼きを行う中で、一緒に焼成実験を行っていた芦沢さんが、粘土で窯をつくってくれた。これによって別の興味の対象であったアンデス形成期の土器を焼成してみることが出来るようになった。それが黒色磨研、灰色磨研、黒鉛土器などである。この3種の土器のうち、黒色磨研土器は野焼きでも可能である。しかし、灰色磨研土器は野焼きでは不可能であり、黒鉛土器に関しては、まだどちらとも言えない。そして窯でおこなう還元焼成では、この3種の土器はどれも焼成することが出来る。しかし、アンデス形成期のという限定をすると、黒色磨研土器は、野焼きと窯のどちらの方法で行ったのか確定できない。黒鉛土器も、野焼きでも可能性はある。ということまでしか今のところ言えない状態である。実はこれを解決するにはどうしたら良いかを模索中で、その一つの方法として土器の器壁断面の観察を行った。これによって酸化焼成か還元焼成かの区別が明確になることを期待したのであるが土器の断面に現れる酸化と還元の影響はかなり複雑であり、もう少し実験は続ける必要がある。

 ところで、最初の「実験考古学とは」という説明文の後段に戻ると「最近は広くデータの収集、記述、解釈および説明のために実験考古学を広く解釈する傾向にあるが、考古学における実験とは仮説を検証するための手段であることにかわりはない。」とある。焼成結果はある土器の焼成法を証明しているのではなくて、一つの可能性を示しているのにすぎないが、このことは土器焼成の実験が無駄というのではなくて、むしろ、「この方法はとらなかったろう」という証明になるのだということに意味を見いだすべきだと思える。

これまで土器焼成実験に関しては、以下のような発表、報告をした。

 

2001年11月 西澤弘恵、芦沢佳子共著

「土器焼成実験2 −焼成温度測定、土器制作法−」 『技術発表会報告6号』 東京大学教養学部共通技術室編

20039月 西澤弘恵、芦沢佳子共著

「土器で土器焼く −黒色土器を考える2−」

『技術発表会報告8号』 東京大学教養学部共通技術室編

2005年2月 西澤弘恵、芦沢佳子共著

「土器焼成 −窯の製作と燃料−」

『技術発表会報告9号』東京大学教養学部共通技術室編

20053月西澤弘恵

「素焼き土器の焼成履歴を考察するための土器焼成実験−黒色化と彩色土器−」 平成16年度科学研究費補助金(奨励研究B)研究成果報告書

 

 

(2)調査速報

「チュンビビルカス郡におけるアンデス牧民の民族誌的調査」

  鳥塚 あゆち(東海大学研究員)

 

20048月から20052月にかけて、ワイリャワイリャという共同体でアンデス牧民に関する調査を行った。ワイリャワイリャはペルー、クスコ県、チュンビビルカス郡、リビタカ行政区に属するが、隣のエスピナル郡との境界に位置している。

今回の調査の当初の目的はアンデス牧民の親族・婚姻関係を調べることであったが、同時に現在の牧民社会とはどのようなものであるのか、かつて文化人類学者によって描かれた牧民社会と同じ姿を現在も留めているのかを実際に自分の目で見たいとも考えていた。調査前に滞在していたクスコで、農耕をまったく行わない牧民がいると聞いたこともあり、彼らはどのように生計を立てているのか、という単純な疑問も持っていた。ワイリャワイリャ共同体を6月に訪れた際に、農耕を行っている様子がないことはわかっており、さらにチュンビビルカス郡ではほとんど民族誌的な調査はされてきていないこともあり、この地を調査地に選んだ。

ワイリャワイリャ共同体の標高は約42005000mであり、リャマ、アルパカを中心とした牧畜を営んでいる。ジャガイモ等の耕作は基本的には行っておらず、確認しただけで34家族のみ小さな畑を持っているが、畑を持つようになったのはここ5年くらいだということである。人口は約350人であり、共同体には4年生までの小学校がある。共同体には、集住地のようなものが2箇所あるが、たいていはエスタンシアと呼ばれる小屋の周りに牧草地が広がる場所に居住している。

調査をしていくうちにかつての牧民像と現在の牧民との間に変化があることがわかった。大きな変化の一つが農作物の獲得方法についてである。約10年前までは、トウモロコシやジャガイモの収穫期には荷駄用のリャマと共にパルーロ県まで旅をし、リャマを使って農作業を手伝い、また肉やアルパカ毛と交換することによって農作物を獲得していたが、現在パルーロまでリャマを連れて行く者はいなくなった。近くのジャガイモ耕作をしている共同体に、収穫の手伝いに行くことはあるそうだが、リャマを連れて行くことはない。農作物はおもに週に2回、近くの共同体で開かれる定期市かヤウリやベリーリェといった町で購入される。購入のための現金はアルパカやヒツジの毛、あるいは肉、皮を売って得ている。

また、彼らが現在抱えている問題としては土地問題があげられる。かつては共同体全体ですべての土地を所有し、おおよそ誰がどこで牧畜を行うかが決まっていたが、共同体内なら他の土地に侵入してはならないということはなかった。これが、1997年に行われた土地区分政策により、現在は共同体の土地は個々人の所有となっている。このことが家畜の数や毛の質の変化、それに伴う人々の争いの原因となったことは確かである。

このような状況に加え、貨幣経済や都市化の影響により共同体は現在、変化の過程にあると言える。個人的には、共同体における儀礼や日常的な習慣、伝統といったものが消失していくのは寂しい気もするが、共同体の若者の中には忘れられていく習慣を取り戻そうと、親から儀礼のやり方を学んでいるという者もいた。私は、変わりつつあるアンデス牧民共同体の姿と、その変化に牧民自身がどのように対応していくのかを今後も見ていきたいと思っている。

 今回の調査で調査地のみならず、ペルー滞在中に多くの人に出会いお世話になった。無事に調査が終えられたのは、これらの人たちのおかげであると思っている。これからの予定としては、調査で得たデータの整理・分析を行うことが第一であるが、再度、追加調査を行い、今回の調査で足りなかったところを補足したいと考えている。

 

 

『古代アメリカ』の原稿募集

『古代アメリカ』編集委員会では、投稿原稿を随時募集しています。

投稿希望者は、『古代アメリカ』掲載の寄稿規定、執筆細目をよくお読み下さい。

また、投稿を希望される方は事前に編集委員会(編集事務局、佐藤宛)まで、メールまたは郵便にてご連絡下さい。編集委員会より「投稿カード」を配布致しますので、これを添付して原稿を提出して下さい。

なお編集作業の都合上、次号への掲載を希望される方は、20051031までに編集委員会より「投稿カード」の配布を受け、200511月末日を目途に原稿を編集事務局へお送りください。

原稿掲載の可否は規定による査読結果を踏まえて編集委員会が決定します。

 

●投稿に関する問い合わせ先:

・佐藤悦夫

 e-mail: satoh@tuins.ac.jp

・佐藤吉文(編集事務局)

 e-mail:yosyfumi1125@yahoo.co.jp

 

 

新入会員

2005121日から2005616日までの役員会(メールを含む)で以下の方々の入会が承認されました。会員数は現在160名となっております。

 

 Andrew K. Balkansky/荒木 秀治/佐々布 裕和/林 直樹/佐藤 朋恵/今泉 和也/楠田 枝里子

 

 

事務局からのお知らせ

1.会費納入のお願い

 2004年度までの会費をまだご納入でない方は、同封いたしました振込用紙にてお振込み下さい。古代アメリカ学会は会員の皆様の年会費で運営されております。ご理解・ご協力を賜りますようお願い申し上げます。

2.会報への投稿募集

 『会報』第19号への原稿を募集します。現地調査や博物館調査での体験やエピソード、各地で行われている研究会や講演会、展示会、出版物の紹介などの情報を、会報委員または研究会事務局までお寄せ下さい。文字数は400800字程度でお願いします。多くの方の投稿をお待ちいたしております。

3.会員の小柴和彦さん佐々木毅さん吉永史彦さんが転居先不明となっております。転居先をご存じの方は、事務局(jssaa@sa.rwx.jp)までお知らせ下さい。

 

4.会誌バックナンバー販売のお知らせ

 『古代アメリカ』のバックナンバーを12000円で販売しております。購入をご希望の方は、ご希望の号数、冊数を古代アメリカ研究会事務局までお知らせ下さい。会誌と振込用紙をお送りいたします。なお、第3号は品切れとなっております。また他に残部希少の号もございますので、品切れの際はご容赦下さい。

 

編集後記

今回は「役員会報告」がない会報となりましたが、投稿してくださった方々のおかげで、充実した内容にすることができました。西澤弘恵さん、鳥塚あゆちさんにこの場をかりてお礼を申し上げます。

今年度の大会日程が決定いたしましたので、「大会のアナウンス」欄をご一読の上、ふるってご参加ください。また「新入会員」の欄では、7人もの新入会員の方々を紹介していることにご注目ください。徐々に会員が増え、会の活動が活発になっていく様子を感じていただけると思います。

20057月 徳江佐和子

<表紙写真説明>

 今年の2月に、ユカタン半島のマヤ遺跡、チチェン・イツァーに行ったときの写真です。チチェン・イツァーはカンクン・ビーチから車で約3時間、日帰りできる距離で、近年大勢の観光客が訪れるようになったようです。短パンにサンダルといった軽装の人が多く、クスコなどのペルーの観光地との雰囲気の違いに驚きました。写真は「エル・カスティーヨ(城塞)」と呼ばれるピラミッドで、傾斜がきつく、ロープにつかまって階段をおりる人の姿が目立ちます。 (写真提供・文:徳江佐和子)

 

 

発行  古代アメリカ学会

発行日 2005年2月1日

編集  徳江佐和子・吉田晃章