古代アメリカ研究会会報No.16(発行2004年6月)

 大会のアナウンスと発表者募集会員からの投稿古代アメリカ学会役員会報告新入会員 事務局からのお知らせ編集後記

 

 
大会のアナウンスと発表者募集

2004年度古代アメリカ学会(総会・研究発表会)は、20041211()早稲田大学において開催することに決定いたしました。今年度の研究発表会は、昨年同様、研究発表、調査速報、ポスターセッションを予定いたしております。発表時間、内容は、以下の通りです。

・研究発表:30分間。

 ・調査速報:15分間。2004年度の春、夏に行った調査の報告。

 ・ポスターセッション:研究発表会場のそとでA0(841×1189mm)版のポスター1枚を用いて行う。

発表希望者は、研究発表、調査速報、ポスターセッションのいずれを希望するかを記し、題名と要旨(400時程度)を事務局までe-mail、またはFAXでお送りください。要旨はHPに掲載いたします。締め切りは、20041022()です。なお当日の発表時間は、発表者数により変更になることがございます。ご了承ください。

 

 

会員からの投稿

(1)研修報告  「東海大学 第2回中米実地研修」

      山口一哉(東海大学大学院 文明研究専攻)

 

私が通っている東海大学には各種様々な研修がありますが、その1つにメソアメリカの遺跡を巡る中米実地研修があります。第1回目は2001年の9月に行われ、2回目は20031223日〜200415日にかけて実施されました。今回の実地研修はグァテマラとホンジュラスに絞り、ティカルやワシャクトゥン、セイバル、エル・プエンテ、カミナルフユー、キリグア、コパンなどの遺跡を訪れました。

本来は学部の授業の1つとして中米実地研修があるのですが、大学院生も参加することは可能で、貴重な機会と思い参加させて頂いた次第です。今回のテーマは「環境と文明」ということで、過酷な熱帯雨林地帯に繁栄したマヤ文明の発生と発展を考えることが大きな目標でした。マヤの人々は苛酷な環境の中で石灰岩やセノーテなどの自然をフルに活用し、土壌を良くするために自分達の排泄物の利用や豆を植えることなどで空気中の窒素を土壌に取り入れるなど、人の知恵を合わせてうまく乗り切っていたと言えます。西欧文明は自然を支配することで発展し、今日に至るまで多大なる恩恵をもたらしてきました。しかし一方で環境破壊などの大きな弊害を生み出してきています。そのような状況の中で自然と人の力のバランスで発展してきたと思われるマヤ文明を実地研修で体験できたことはとても良かったし勉強にもなりました。途中小さなトラブル(アメーバで腹を壊した人いたし、セイバル行きの川下りで船のエンジン止まったりした…)はありましたがとても充実した2週間でした。

 

(2)大学院紹介  「アメリカの大学院紹介1:アリゾナ州立大学」

村上達也(アリゾナ州立大学大学院 人類学部)

 

 最近アメリカやメキシコなど海外で学位を取る学生が増えてきています。私は2000年からアリゾナ州立大学人類学部の博士課程に留学していますが、日本にいる学生から進学先について相談を受けることが度々あります。そこで学生が大半を占める本学会の現状を踏まえて、アメリカの大学院の紹介をしたいと思います。タイトルに「1」と付けたのは、他にも留学している方からの投稿を願ってのことです。アメリカの大学院と言っても大学によってかなりの違いがあるので、今回は私の知っている範囲で紹介させていただきます。

 まず、日本の大学院と最も異なるものに授業があります。1つの授業はたいてい1週間に2回あります。最大の特徴は大量に論文を読まされることです。1回の授業に本1冊というのは日常茶飯事です。そして一学期に授業を2つか3つとると寝る時間がなくなり、学期が終わる頃には段ボール1箱分の論文のコピーがたまります。授業の内容も読み物についてのレジュメ発表などはなく、とことんディスカッションをします。さらに、学期末にはその授業で学んだことをもとに論文を提出しなければいけません。論文は文献研究でよい場合もありますが、実際に何かを分析しないといけない場合もあります。いずれにせよ、授業での読み物をこなしながら自分のプロジェクトを進めないといけないので、時間的にかなり苦しくなります。しかし、こうして授業でかなり鍛えられるのでかなりの自信になります。

 次に博士を取るまでの過程を簡単に説明したいと思います。まず、当然ですが、トピックを決めます。そしてそれに応じて自分の博士論文の審査委員(3人から5人くらい)を選びます。この審査委員の委員長が指導教官に当たります。その後、授業を取り終わった頃から博士の候補になるための資格試験の準備に入ります。この資格試験は大学によって異なりますが、ASUでは18時間、2日に渡って軟禁されて審査委員が考えた問題について論文形式で解答します。この資格試験では3つのトピックを選びます。一つは自分の専門とする地域と時代、2つ目は理論、3つ目は方法論について選び、その後それぞれのトピックについての文献を集め文献表を作ります。文献の数はだいたい200から400くらいです。この文献表が認められればひたすら読んで試験に挑むわけです。その試験に通った後、今度は博士論文のプロポーザル(調査計画書)を書きます。このプロポーザルが一番の難関です。博士論文の目的、方法、先行研究をまとめ、予想される結論まで書かないといけません。つまり、実際のデータと分析を抜かした博士論文の縮小版を書かなければならないのです。このプロポーザルを書き、審査委員会でディフェンスをして認められて晴れて博士候補になるわけです。プロポーザルを基金や財団に申請して調査資金を集め調査をし、論文を執筆し、博士論文の口頭試問に通れば博士となるわけです。日本と違い、いろいろな手続きがあり時間がかかりますが、こういった通過儀礼を経て一人前の研究者として認められるわけです。

 次に財政的な面について一言。確かに留学はお金がかかります。しかしながら、日本で大学院に通うことを考えると、実はアメリカの方が安い場合があります。これは大学によって地域によってかなり違ってくると思いますが、たいていの大学ではティーチング・アシスタント(TA)やリサーチ・アシスタント(RA)というポジッションがあります。ASUの場合ですと、TAあるいはRAになると学費が免除になり、週に20時間(ハーフタイム)程働くと家賃を含む生活費を払える程度の給料がもらえます。したがって、学期中は生活に困ることはありません。ただ、大学の財政状況により、TARAの数が限られるため競争が激しいですが、裕福な大学に行くとそれほど問題ではないようです。金持ちの私立大学に行くと、学費は全額免除で生活費付きというところがあります。残念ながらASUはかなり貧乏な方に属しますが、アリゾナは物価が安いため何とか生活はできます。問題は夏休みの間で、この間は給料はありませんから、何とかしないといけません。ほと

んどの研究者は夏の間に調査を行いますが、調査に参加して給料を少しもらったところで生活はできません。留学生は学外で働くことは禁止されているので、学内で職を見つけるか、日本に出稼ぎにでるかしかありません。幸いにASUの人類学部には夏の間にフィールド・スクール(野外実習)があり、この間にTAとして働くことができます。しかもフル・タイム(週に40時間)で働けるので給料も2倍になります。私は1年目には考古学のフィールドスクールで、2年目以降は民族誌のフィールドスクールでTAをやって生き延びています。この夏休みさえクリアすれば、何とか研究を続けることができます。また私が留学してから知ったことですが、調査のための助成金はいろいろありますが、生活費を対象にした奨学金のほとんどはアメリカ国民が対象なので、私たち留学生は応募する資格がありません。アメリカにも日本学術振興会特別研究員のような制度があるのですが、これも国民が対象です。したがって、留学で成功する秘訣は比較的裕福な大学に行くことだと思います。実際、博士を取るのに何年もかかる学生の多くが財政的な問題によります。

 さて、以上アメリカの大学院についてASUを例に紹介してきましたが、最後にASU自体の紹介をしたいと思います。ASUの人類学部には常勤の教員が36人おり、院生は合計200人近くいるかなり大きな学部です。単純計算で考古学はこれらの3分の1ということになります。ASUの考古学はやはり地元のアメリカ南西部の考古学が最も強い分野ですが、それに続いてメソアメリカ、アメリカの他の地域、中東、エジプト、ヨーロッパ、南アフリカなど比較的世界中に散らばっています。メソアメリカについては、最近静かなブームになっているメキシコ北西部、オルメカが栄えたメキシコ湾岸地域、そして古典期で最大の都市テオティワカンで調査を続けている先生方がいます。また、ASUはバイオアーケオロジーを専攻できる数少ない大学の一つです。このプログラムは考古学と形質人類学両方を組み入れたものです(修士しかなく、博士からは考古学か形質人類学のいずれかを選択しないといけません)。付属研究所にルーシーを発見したジョハンソン率いる人類の起源研究所、考古学研究所、埋蔵文化財研究所、そして他の分野と共同の環境研究センターがあります。この環境研究センターでは、長期的な視野にたって考古学、文化人類学、生物学、生態学、地理学、社会学など共同で環境と人間の関係についての調査が進行中です。

 以上アメリカの大学院のシステムならびにASUについて簡単に紹介しましたが、日本で進学先が限られている現状を鑑みると、アメリカを含む海外の大学院も一つの選択肢に入れられるのではないでしょうか。進学先によっては財政的に日本よりかなり恵まれているところもあります。また、日本で留学のための奨学金を申請することもできます(留学後は申請できなくなります)。本稿が進学を考え中のみなさんのお役に立てたかどうかは分かりませんが、少しでも多くの方が進学され日本における古代アメリカ研究がさらなる発展を遂げることを祈っています。

 

古代アメリカ学会役員会報告

古代アメリカ学会役員会議事録

日時:200437()午後1時より午後5時頃まで

場所:東京大学駒場キャンパス 14号館407教室

出席者:加藤泰建、横山玲子、青山和夫、長谷川悦夫、井口欣也、大平秀一、向井暁子

委任状:佐藤吉文、徳江佐和子

欠席者:寺崎秀一郎

議長:横山玲子 書記:向井暁子

 

1.第9回大会の日程・開催校の決定

 来年度の大会(第9回大会)の開催日程・開催場所について協議した。日程については、11月頃で合意した。開催場所については、関東地域での大会が続いたので次は関西地域にしてはどうかという意見が出された一方、これまでの参加者数を比較すれば関東地域のほうが参加者にとって条件が良いのではないかという意見が出され、会場の設備等も考慮して協議した結果、早稲田大学を第一候補、埼玉大学を第二候補とすることで合意した。最終的な日程および会場校は、会報16号で会員に知らせることとした。

 

2.2003.42004.9年度会計中間報告

 事務幹事より2003.42004.9年度の会計の中間報告があった。会員148人中43人が会費未納であり、今年9月までの支出を考えると最終的に90,000円程度の赤字になり、会誌7号の発行に支障をきたす可能性が指摘された。協議の結果、会費未納の会員に、会長名で督促状を出すことに決定した。また、広報委員よりHPの開設・維持管理の際に技術面でかなり協力してくれた方がおり、人件費を払いたいという提案があり、10,000円以内で予備費から人件費を支出することを承認した。また、通信費等の経費を押えるため、メールを活用することとした。さらに、財政状況によっては会費の値上げも今後検討していくことで合意した。

 

3.会誌7について

1)会誌7号編集報告

 編集委員より会誌7号の編集状況について次の通り報告があった。論文1本、研究ノート4本の投稿があり、査読・審議の結果、論文は研究ノートとし、研究ノートのうち1本は採用しないこととした。したがって会誌第7号には研究ノート4本の掲載が見込まれている。特集「調査速報」については1件につき35ページとし、依頼原稿として編集委員会から依頼したところ、7本集まった。会員の活動状況については投稿が少なく再募集している。書評については投稿がなかったので現在1本依頼している。また、特集については、次回以降、レギュラーのカテゴリーとして行きたいと考えている。

 報告に関して次のような質疑がなされた。特集「調査速報」は何人に依頼したのかという質問に対し、編集委員からは、海外調査をしている約15の団体・個人に依頼したという回答がなされた。

2)選挙管理規程、会則の会誌への掲載について

 会誌7号に、選挙管理規程を掲載すべきかどうかについて審議を行い、選挙管理規程については会誌に掲載しないことで合意した。また、会則については、改訂があった年度の会誌にのみ掲載すること、新入会員には新しい会則を渡すことで合意した。

3)執筆細目の改正について

 下線部のとおり改正することを承認した。

 3.構成

  論文:題名、日本語要旨、キーワード、目次、本文、註、参考文献、欧文要旨。

4)「コメント」の扱いについて

 編集委員より、次のような提案があった。

 編集委員会としては「論文」に対してコメントを依頼することはしないが、従来からあった「投稿カテゴリー」としての「コメント」は残すこととする。投稿されたコメントについては、編集委員会が掲載の可否を決定することとする。また、コメントが掲載される場合、有意義な議論が期待できるのであれば、それに対するリプライを論文著者に依頼することとする。

 役員会はこの提案を承認し、その執行を編集委員会に一任することを承認した。

 

4.監査委員の交替人事

 監査委員の青山委員が、20044月より1年間海外に滞在し、監査委員の任務の継続が困難になると考えられるため、その交替人事について話し合った。協議の結果、電子メールによる通信で会計監査を続けることが可能であるため、青山委員を継続して監査委員とすることで合意した。

 

5.事務幹事の交替人事

 事務幹事の向井委員が20048月より海外に滞在し、事務幹事の任務の継続が困難になるため、その交替人事について話し合った。協議の結果、吉田晃章会員(東海大学)を200441日より930日まで事務幹事代行とすることで合意した。

 

6.事務局について

 事務幹事交代に伴う事務局の移動については、2004930日までは東海大学に置くことで合意した。

 

7.役員選挙について

(1)  選挙スケジュールについて

 2004317日に名簿公示・選挙期間公示・開票日公示、610日に投票用紙交付、617日〜30日に投票、73日に開票、79日に当選人への通知を行うことで合意した。

(2)  選挙管理委員の選出

 古代アメリカ学会選挙管理規程第3条に基づき、鶴見英成(会員)、吉田晃章(会員)、横山玲子(役員)、向井暁子(役員)を選挙管理委員として選出し選挙管理委員会を組織した。また、鶴見英成会員を選挙管理委員会委員長とすることで合意した。

 

8.役員の委嘱手続きについて

 今後は、役員及び選挙管理委員には、委嘱状を発行することで合意した。

 

9.その他

(1)  研究発表会の名称について

 毎年開かれる古代アメリカ学会の「研究発表会」の名称を「研究大会」としてはどうかという提案が出され、承認された。

(2)  会員の退会について

 退会願いの出されていた池田光穂会員の退会を承認した。

(3)  会報の改善について

    会報に掲載する議事録が長いのでもっと短くしてはどうかという意見が出され、会報用に短くした議事録を作成することで合意した。また、会報のコンテンツの順序について、会員からの投稿を前に、議事録等の事務的な連絡は後にしてはどうかという意見が出され、改善を検討することとした。

(4)  年会費の値上げについて

今年度は会計年度の変更により1年分の収入を1年半分の支出に当てることとなり、財政的に困難な状況にある。また、会誌の発送・役員選挙の郵送作業・HPの作成や管理・会誌の編集等には、作業負担軽減のため人件費の支出が既に承認されている。このため、4000円という年会費と1年当たりの経費が見合うかどうか、改めて検討すべきではないかという意見が出された。これに対し、人件費に関する支出については、未納者の納入があればまかなえるであろうとの意見が出された。また、学生会員と一般会員とで年会費を変えてはどうかという意見や、研究大会で参加費を徴収してはどうかという意見が出された。

       協議の結果、年会費の値上げは検討すべき課題とし、今後の支出状況によって早急に結論を出す

   必要があれば7月に臨時役員会を開いて検討すること、急ぐ必要がなければ10月の役員会で改めて

   検討することとした。

 

新入会員

20031227日から2004518日までの役員会(メールを含む)で以下の方々の入会が承認されました。会員数は現在152名となっております。

 西澤 弘恵 / 町田壮平 / 大野裕子 / 牧村宏嗣 

 

事務局からのお知らせ

1.会費納入のお願い

 2003年度までの会費をまだご納入でない方は、同封いたしました振込用紙にてお振込み下さい。古代アメリカ学会は会員の皆様の年会費で運営されております。ご理解・ご協力を賜りますようお願い申し上げます。

 

2.会報への投稿募集

 『会報』第17号への原稿を募集します。現地調査や博物館調査での体験やエピソード、各地で行われている研究会や講演会、展示会、出版物の紹介などの情報を、会報委員または研究会事務局までお寄せ下さい。文字数は400800字程度でお願いします。多くの方の投稿をお待ちいた

しております。

 

3.会員の小柴和彦さん、吉永史彦さんが転居先不明となっております。転居先をご存じの方は、事務局(jssaa@sa.rwx.jp)までお知らせ下さい。

 

4.会誌バック・ナンバー販売のお知らせ

 『古代アメリカ』の創刊号から第6号を12000円で販売しております。購入をご希望の方は、ご希望の号数、冊数を古代アメリカ研究会事務局までお知らせ下さい。会誌と振込用紙をお送りいたします。なお、残部希少の号もございますので、品切れの際はご容赦下さい。

 

編集後記

「役員会報告」にありましたように、会報について、「会員の投稿を事務報告より前に持ってきたらどうだろうか」などの意見がありました。これをうけて、今回は従来と異なる形式にしましたが、いかがでしょうか。この件についてのご意見をお待ちしています。

今回偶然にも二人の会員から、大学・大学院の活動や生活を紹介する「会員の投稿」をいただきました。これに続く他の方からの「紹介」もお待ちしています。また、その他の投稿や、内容に関するアイデアも是非お待ちしています。

投稿してくださった山口一哉さん、村上達也さんにこの場をかりてお礼を申し上げます。

 

 

2004年6月 徳江佐和子

 

写真提供(表紙):吉田晃章

 

 

発行  古代アメリカ学会

発行日 2004年6月10日

編集  徳江佐和子・吉田晃章