古代アメリカ研究会会報No.13(発行2003年2月)

 役員会報告『古代アメリカ』第6編集委員会からのお知らせ会員からの投稿新入会員名簿事務局からのお知らせ編集後記

 

 

 古代アメリカ研究会役員会報告

開催日:20021123日(土) 13001740

開催場所:東京大学駒場キャンパス 14号館407教室

出席者:加藤泰建、横山玲子、青山和夫、長谷川悦夫、井口欣也、佐藤吉文、大平秀一、徳江佐和子、向井暁子

委任状:寺崎秀一郎

議長:横山玲子  書記:向井暁子

 

議題:

1.2003年度大会について

 大会の秋開催について審議を行った。6月の大会開催は、他の学会と日程が重なりやすいという欠点がある。一方、秋は他の学会の日程をあまり考慮する必要がなく、また夏に調査を行う会員が多いため、最新の研究成果を発表できるという利点がある。したがって2003年度大会は200311月中旬〜12月上旬に開催することとした。開催場所は早稲田大学に依頼することとなった。なお、研究発表会の発表者は、『会報』14号で募集する。

 また、来年の秋まで研究発表会がないのは問題であり、研究会の向上のためにも春に例会(研究発表会)、秋に大会(総会・研究発表会)を開いてはどうかという意見や、そのために会則の第31項に例会に関する条文を加えてはどうかという意見が出された。これに対し、年2回の研究発表会に発表者が確保できるであろうかという意見が出され、この問題は今後の検討課題とした。

 

2.会誌『古代アメリカ』第6号について

 編集委員より会誌『古代アメリカ』第6号の編集状況について以下の報告があった。6号では、論文および研究ノートとして計4本の掲載が予定されており、いずれも投稿原稿である。この他に書評2本を掲載予定である。また、会員の活動状況については、会報13号送付の際に原稿募集を行う。

 

3.会員の入会

 入会希望者3名を新入会員として承認した。また、今後は入会申込書に推薦者の欄を設けないことにした。

 

4.運営委員の任期について

会則では役員の任期は2年と規定されているが、会長が任期途中で任命する運営委員については、2年に満たない場合でも会長交代と同時に任期が切れることにしている。これについて会則の整備をするべきではないかという意見が出された。これに対し、任期途中に運営委員を任命する際は、残りの任期を勤めると解釈すべきであり現在の会則で十分であろうとの意見が出された。審議の結果、運営委員任命の際に残りの任期を勤めて頂く旨を伝え、会則の変更は行わないこととなった。

 

5.2002年度役員への申し送り事項について

 2002年度役員への申し送り事項を含め、以下の9件について審議を行った。

1)会誌について

@      原稿依頼基準の明確化について

依頼原稿には査読を行わず、投稿原稿には査読を行うため、編集委員会は、特定の人に原稿を依頼した理由を明示すべきであるとの意見が出された。審議の結果、以下の二点で合意した。

 原稿の依頼(依頼原稿)を行うか否かは会誌の編集方針と関わることであるため、編集委員会に任せるべきである。また編集委員会は、編集後記等において依頼理由を明らかにする必要がある。

A      原稿の提出・受領日について

   原稿の提出・受領の日付を明示していく方向で検討することとした。

B      コメントとリプライについて

 これまでのコメントとリプライの中には議論がかみ合わないものもあり、廃止したほうが良いという意見が出された。審議の結果廃止の方向で検討することとした。

C      査読について

 査読を査読者に依頼する場合、査読マニュアルはあるのかという質問が出された。これに対し編集委員会からは、査読マニュアルはなく、査読者によって加筆・修正の指示はまちまちであるのが現状であるとの回答がなされた。審議の結果、編集委員会で査読のルールを積み上げていくこととなった。

D      研究ノートの位置づけについて

 研究ノートを廃止し、論文に含めてはどうかという意見が会員から出されたことが報告された。審議の結果、研究ノートはデータ提示を中心としたものや、研究の途中段階的なものの発表の場として意味があるとして、これからも必要なカテゴリーとして存続することとなった。

E      研究ノートと論文の枚数制限について

 投稿原稿の枚数制限が厳しいのではないかという意見が出された。審議の結果、編集委員会が事例ごとに柔軟に対応していくこととなった。

 

2)役員会・総会について

 役員会議事録の署名人については、代表幹事が出席者の中から選出する。総会議事録の署名人については、総会において選出するように、会則(173)の改訂を次の総会に諮ることにした。また、総会の議長を役員以外からも選出できるように、会則(173)の改訂を次の総会に諮ることにした。

 

3)役員選挙について

会則に選挙管理規定がないという問題については、会則第131項を改定し、別に選挙管理規定を作成することとなった。

 

4)大会関連業務について

前年度役員会からの以下の5点の申し送り事項を確認した。

@今後は大会関係の業務を大会開催校に任せる。

A一般会計から大会開催校に補助費を出す。

B大会開催校は予算案を出し補助費はそれに基づいて出される。

C補助費の収支については、役員会に報告する。

D大会開催校は役員会が決める。

 

5)大会参加費について

会員については、大会開催には会場使用料・レジュメ代等の経費がかかる点、これらの経費は大会参加者が負担すべきである点を考慮し、今後は大会参加費を有料にすることとなった。金額については、大会開催校からの予算案に基づいて審議することとした。

また、非会員については、会員の年会費を考慮し、会員よりも参加費を高く設定することにした。

 

6)年会費・懇親会費の事前振り込みについて

 年会費の事前振込については、原則的には研究会本体に事前に振り込んでもらうが、大会当日の支払いも受け付けることに決定した。また、懇親会費の事前振込については、基本的には大会開催校に一任するが、研究会会計との混同を避けるため、大会開催校が別に郵便口座を設け、その口座に振り込んでもらうこととした。

 

7)大会の開催時期について

 前述の通り、大会の秋開催を決定した。また、2003年秋の総会において、2003年度と2004年度の予算と、2002年度の決算の承認を行うことを決めた。

 

8)役員選挙の時期について

選挙を前年度中に郵送で行い、それによって選出された新役員が新年度の予算と事業計画の責任を持てるような体制をつくることに決定した。これに伴い、会則第131項の改訂を総会で審議することにした。

 

9)ホームページ改善

HP改善ワーキングがとりまとめた案、および総会で提出された会員の意見をとりいれ、早急に改善具体化するよう前役員会からの申し送りがあった。これに対し、現時点では、HPの改善よりも、会誌や研究会本体の充実の方が優先であり、HPのこれ以上の拡大は必要ないのではないかという意見が出された。これを受け、HPについては以下の点で合意した。

・基本方針は現状維持とし、サーバーも変更しない。

HPの更新回数を年2回程度と決め、その業務を定額で個人に委託する。また委託先の人選は広報委員に一任する。

・前年度のHPワーキング・グループ、および役員会が掲載を決定したコンテンツについては、諸事項について検討した結果、今期はできないことで合意したが、今後掲載する内容については以下のように決定した。

@最新情報・・・事務局からのお知らせ、ホームページ更新履歴

A会の概要・・・会の目的、会則、役員の氏名・任期

B会誌・・・各号の目次

C入会案内・・・HPから印刷したものを郵送で申し込めるようにする。

D研究機関案内

E国内美術館・博物館情報

F関連リンク・・・公的機関に限ってリンクする。

 

6.学会登録について

 学術会議登録について加藤会長より報告がなされ、それに基づいて審議を行った。

        18期の日本学術会議は既に申請を締め切っているため、次の申請は平成17年となる。

        学術会議登録条件の中で古代アメリカ研究会が現在満たしていないのは、「会員の過半数が科学者(研究者)によって構成される」という点である。

        3年後の学術会議登録を目指した今後の方針:

@ 研究者数の増加をはかる。

A 関連する研究者にも裾野を広げる。

B 共著による論文発表など、若手研究者の業績発表の機会を拡大する工夫を図る。

C 会則第2条、第51項の再検討。

 

7.第8回総会に諮る会則の変更案(下線部が変更箇所)

131

13条(役員の選出)

 会長、代表幹事、事務幹事および監査委員は、会員の投票により選出するものとする。選挙についての規定は別に定める。

 

173

17条(総会の開催)

   3 総会の議長・議事録署名人は総会において選出するものとする。

 

 
『古代アメリカ』第6号編集委員会からのお知らせ
「会員の活動状況」のコーナーへの原稿執筆のお願い

  会誌『古代アメリカ』では、次号におきましても恒例となりました会員の活動状況を掲載します。南北アメリカ大陸の先史学・考古学、及びその関連分野に関する会員の皆様の昨年(20021月から12月まで)の活動についてお教え下さい。また、昨年の第5号同様、個人の活動の他に、調査プロジェクト、研究会活動に関する情報も募ります。会員の皆様には情報の提供について、よろしくご協力のほどお願いいたします。なお、詳細につきましては、同封の『「会員の活動状況」のコーナーへの原稿執筆のお願い』をご参照下さい。

 

 

会員からの投稿

海外調査報告(1)

「第一次・第二次ヤンガヌーコ遺跡発掘調査概報」

(東海大学文学部アメリカ文明学科 松本 亮三、横山 玲子)

 

先史時代の中央アンデス地域において大量の金製品が製作されていたことは良く知られており、ペルー北海岸のランバイェケ川流域にあるバタン・グランデ遺跡およびワカ・ラハーダ遺跡の発掘調査によって、当該地域が金製品の主たる生産地であり、消費地でもあったことが明らかにされてきた。しかし、これらの金およびトゥンバガ製品の原材料となった金は、どこからどのようにして得られたのだろうか。多くのアンデス考古学者は、近隣の河川や特にアマゾン地域の河川から容易に採取できたはずの砂金を利用しただろうと考えている。しかし、砂金だけではこれまで大量に出土してきた金製品の原料すべてを賄うことは不可能である。開発のメカニズムはまだ解明できないが、平地の河川に砂金を出現させる金鉱床そのものが存在する高地で金鉱山が開発され、いわゆる「山金」が直接に利用されたと考えなければ、これほどまでの量を説明できないのである。

 ヤンガヌーコ遺跡のあるカイェホン・デ・ワイラス(アンデス北中部高地)は、彩色カオリン土器で知られるレクワイ文化(紀元前?-800年頃)が興隆した地域である。また、レクワイと同時期に類似した文様をもつカオリン土器を製作したカハマルカ地域(アンデス北高地)では、その後の中期ホライズン-後期ホライズンすべてにおいて、サンタ川、ヘケテペケ川、ランバイェケ川を通して、カオリン土器を海岸に搬出し続け、それは海岸の諸文化で尊重されていた。カオリンは海岸地域にはない原料である。興味深いことに、カオリン土器やその模倣土器が出土している海岸の遺跡(例えばバタン・グランデ遺跡など)では、さまざまな金製品が製作されている。そのような事情に加え、ヤンガヌーコにおいて金鉱山が存在し、さらにそこがカオリン土器の製作地に極めて近いという事実を考えれば、金という最も重要な冶金の原料は、カオリン土器の移動ルートに沿って運ばれたのではないかと推測することができる。このことから、アンデス北高地からカオリン土器が搬出され、海岸の金製品製作地に至るルートは、それを通って金鉱石が運ばれた、ゴールド・ロードを形成していたのではないかと考えられるのである。

 以上の仮説に基づき、東海大学新大陸学術調査団(団長松本亮三)は、20022-3(第一次調査)および8-9(第二次調査)2回に渡って、ヤンガヌーコ遺跡複合における地形測量と発掘調査を行った。ヤンガヌーコ遺跡複合は、ペルー北中部高地ワスカラン山(海抜6746m)の西南麓(海抜約3800-4000m)にあるワスカラン国立公園にある。本遺跡複合の中心部は、北東から南西に2000m、北西から南東に600mを擁するが、ケブラーダ・デ・マンダが形作る自然地形は水源部の下方に3箇所の狭窄部をもっているため、連続した4つの小河谷を区分することができる。第一次調査では、本遺跡複合の下流域にあたるヤンガヌーコ湖を含む第T河谷の地形測量を行い、600m×2000mに及ぶ1mコンターの地形図を作成するとともに、主要遺構の記録と写真撮影を行った。第二次調査では、第T河谷内において環境・遺構の諸特徴から10区域に区分したうちの、A区、C区、D区での発掘調査を行った。その結果を以下に簡単にまとめる。1)A区、C区、D区全体を通してレクワイ文化とカハマルカ文化双方の特徴をもった土器が出土した。両文化の関係性を再考する必要がある。2)A区においてのみ、北海岸の特徴(モチェ文化、シカン文化、チムー文化)をもつ土器が出土した。海岸からの移民の可能性を考えなければならない。3)海抜約4000mの本遺跡複合で、チャビン様式の土器が出土したこと。これほどの高地でチャビン様式の土器が出土した例はこれまで報告されていない。4)現在分析中だが周辺で採取した岩石から、金の含有が認められたこと。5)C区において、実用性はないと考えられるような屈曲した複数のダクトをもった炉が多数出土したこと。6)D区では、有機物を燃やしたと思われる層の上に、故意に大岩が安置されており、極めて意図的な祭祀行動が行われていたことが推測された。これらのことから、カハマルカ文化とレクワイ文化が、有用な鉱物資源の産出地としてつながりをもち、さらには、当該地域が北海岸地域と密接な関係の上に開発されたこと、そしてそれは、形成期中期からすでに始まっていたことを示唆していると考えて良いであろう。

 第一次・第二次調査には、東海大学の教員3(松本亮三(団長)、大平秀一、横山玲子)、大学院生5(吉田晃章、須藤大輝、江川晶子、鳥塚あゆち、村上彩子)、研修生1(向井暁子)、学部生2(木下直俊、矢島純子)のほか、ペルーからは、レイェンダ公園考古学局のルセニダ・カリオン(副団長)、サン・マルコス大学の学部生4(アルフォンソ・R・ポンシアーノ・ゴンサーレス、アルベルト・ルイス・タピア・メンデス、ギジェルモ・A・オレヤーナ・マウリシオ、ホセ・アントニオ・ニサマ・ベニーテス)が参加した。20038-9月に第三次調査を予定している。

 

海外調査報告(2)

「アンデス旅芸人の『巡礼』」

佐々木 直美

アンデスの村から海岸都市部へ押し寄せる移住者たちの波と、それに伴う「リマのアンデス化」などが研究者やリマ社会の注目を集めてもう半世紀近くになる。「チョロ」と呼ばれるアンデス出身者やその二世たちの増加は、更に彼らの存在にインパクトをもたらし続けている。

彼らの嗜好や興味があらゆる分野で商品化され消費されるにともない、かつては白人支配者層が独占していた高級ショッピング街にもチョロたちが闊歩するようになった。1998年にリマで湧き起こった「人種差別論争」と「反人種差別デモ」の渦中にあったのは、「肌の色」で入店制限をしたと非難された数件の高級ディスコであった。

チョロたちの影響はそればかりではない。視聴率に左右されるテレビもまた、チョロたちを強く意識した番組作りへと転向している。数年あるいは数ヶ月振りにリマを訪れると、その度ごとに彼らの影響による変化を目の当たりにし驚くのは私だけではないだろう。

私は「チョロが作り出す都市と農村の関係」に興味を持ち調査を開始した。そこで注目したのがリマに拠点を置きアンデスの村々を巡業する旅芸人たちである。1998年と2000年にはリマの広場で誕生したチョロとネグロの「漫才」コンビに、2002年にはアヤクチョ県特有「ハサミの舞」の踊り手たちに協力を仰いだ。

それぞれの巡業へ幾度か同行して最も印象に残ったことは、「村」でもあり「民衆」でもある「pueblo」へ抱く旅芸人たちの特別な想いであった。リマを出発し、長距離悪路を辿りながら疲労や寒さや空腹、時には危険なアクシデントの恐怖に耐えて目的地を目指す巡業は、そこで遂に「pueblo」の祝福を受ける彼らの「巡礼」のようでもあった。

 

 

新入会員名簿

20021123日の役員会で以下の方々の入会が承認されました。現在、会員数は148名となっております。

   北島 拓 、 森 和重、 山口一哉

 

 

事務局からのお知らせ

1.古代アメリカ研究会第8回大会について

 役員会報告に掲載しましたとおり、第8回大会は200311月中旬〜12月上旬の間に開催されることとなりました。日程は未定です。また、第8回大会の発表者の募集は、会報14(20037月発行予定)において行います。

 

2.会報への投稿募集

 『会報』第14号への投稿を募集します。現地調査や博物館調査での体験やエピソード、各地で行われている研究会や講演会、展示会、出版物の紹介などの情報を、会報委

 

員または研究会事務局までお寄せ下さい。文字数は400800字程度でお願いします。多くの方の投稿をお待ち致しております。

 

3.会費納入のお願い

 2003年度までの会費をまだ納入されていない方は、同封しました振込用紙にてお振込み下さい。

 

4.会員の小柴和彦さんが転居先不明となっております。転居先をご存じの方は事務局までお知らせ下さい。

 

編集後記

会員の調査、研究の最新情報が交換できるのがこの会の利点であると、役員会の時に加藤会長よりお言葉がありました。会報もそのような情報交換の場としてさらに活用してもらいたいと思っています。調査後の第一報や、現地の様子が伝わるような生き生きとした調査報告など、会誌に載せるものとはまた違った活動報告の投稿をお待ちしています。また、個人で活動している会員や、発掘以外の調査に従事している会員の方々からの情報発信を歓迎いたします。

2003年2月 徳江佐和子

 

 

 

写真提供(表紙):鳥塚あゆち氏

 

発行  古代アメリカ研究会

発行日 2001724

編集  横山玲子・向井暁子