古代アメリカ研究会会報No.11(発行2002年2月)

 役員会報告『古代アメリカ』第5号編集委員会からのお知らせ会員からの投稿新入会員名簿事務局からのお知らせ編集後記

 

 

 古代アメリカ研究会役員会報告

開催日:20011227日(木)

開催場所:東京大学教養学部14号館3302A教室

出席者:大貫良夫、関雄二、井口欣也、杓谷茂樹、柳沢健司、中嶋直樹、向井暁子。

委任状:馬瀬智光、多々良穣、松本剛、八杉佳穂、横山玲子。

議長:関雄二

書記:向井暁子

 

議題

1.2002年度総会・研究発表会について

  2002年度総会、研究発表会は、2002年6月8日(土)東海大学湘南校舎で開催することに決定した。また、研究発表会の発表者は『会報』11号で募集することとした。

 

2.会誌『古代アメリカ』第5号について

編集委員より会誌『古代アメリカ』第5号の編集状況について報告があった。5号では論文および研究ノートとして計5本の掲載が予定されており、そのうち2本が投稿原稿である。この他に書評1本とコメントおよびリプライ各1本が掲載予定である。また5号でも会員の活動状況を掲載するが、これについては『会報』11号で原稿を募集する。

 

3.会員の入会・退会

入会希望者10名を新入会員として承認した。また、退会希望者1名の退会を認めた。

 

4.会報改善案

会報委員の横山氏より(横山氏欠席のため向井が代理で読み上げた)現在の会報を、A4版、カラー紙に改善する案と、それに伴う会報発行費の増額が提案された。役員会はこの提案とそれに伴う予算の増額を承認した。

 

5.会誌の依頼論文について

 会誌『古代アメリカ』における依頼論文の是非に関する意見が一部の会員にあることを受け、この問題については編集委員会で引き続き話し合い、編集委員会としての提案を出すこととした。

 

6.ホームページ改善案

大貫会長の希望により、HP改善について検討するHPワーキンググループが2001714日に結成され、構成員として馬瀬、松本、八杉、中嶋、向井が任命された。2001930日に第1HPワーキンググループが開かれHPの改善について話し合い改善案を作成した。

T. HPの内容について

 

項目

備考

1

研究会概要

会の目的、規約、役員の氏名・任期を追加。

2

会誌

最新の会誌の表紙、目次、要約を掲載。バックナンバーについては全文を掲載。

3

会報

従来どおり全文を掲載。将来的にメーリングリストでの配信を検討する。

4

研究機関

古代アメリカ文化を学習できる大学を掲載。

5

調査案内

会員の主催する調査、会員の参加した調査について掲載。

6

入会案内

HPから入会申込書を印刷できるようにする。

7

関連研究会情報

概要の掲載、各研究会の担当者が書きこめるような掲示板方式で、研究会情報を書きこんでもらう。

8

文献

和書(入門程度)、英語・スペイン語・日本語の定期刊行物

9

遺跡情報

北米、中米、南米の主な遺跡に関する情報を提供する。

10

関連リンク

「古代アメリカ」に関連するHPにリンクできるようにする。

11

美術館・博物館情報

古代アメリカ文化の資料を所蔵している国内の博物館・美術館の紹介。

12

概説・編年

初心者のためのアメリカ大陸先史文化の概説。

13

メーリングリスト

将来的に会報等を配信することを検討。

14

事務局からのお知らせ

現行の仕組みに新着情報を追加。

15

ホームページ更新履歴

更新履歴を新着情報と同一ページに掲載。

16

サイトマップ

エクスプローラのような階層形式で個別ページに表示。

 

 

 役員会は1〜7、10〜11、13〜16を承認した。また、会報のバック・ナンバーを全文掲載する案、89については、作業の量と方法など具体的な問題が山積するため、今後の検討課題とした。12については必要ないという意見が出され、掲載しないこととした。

U.ホームページの宣伝

会誌・会報でHPを宣伝するとともに、関連サイトとリンクさせる。

V.プロバイダとの契約

 HPワーキンググループは学会登録後nacsisHPを開設することを提案した。これに対し「古代アメリカ研究会」の学会登録はまだ難しいことからnacsisからのホームページ開設はまだ難しいとの意見が出された。

W.ホームページのタイトルについて

 HPワーキンググループは学会登録を前提としてタイトルを「古代アメリカ学会」に変更することを提案したが、学会登録がまだ難しいことから、HPのタイトル変更も行わないとした。

X.ホームページの内容変更までの流れ

広報委員(八杉佳穂、松本剛)とHPワーキンググループの承認を得た後、役員会の承認を得ることとした。

 

7.研究発表について

研究発表の方式をパネルディスカッションや分科会に変えてはどうかという提案が複数の役員・会員から出された。この提案に対し、そのような討論の場を設けることは理想的ではあるが実際には討論に参加できる会員は少ないのではないかという意見、会員から企画があれば発表形式を変えてはどうかという意見が出された。これらの意見をふまえ、次の会報(11号)で発表者の募集と同時にパネルディスカッション、分科会等の企画を募集し、その結果企画が集まらなければ役員会で再検討することとした。

また、テーマを決めた討論形式で研究発表会を行った場合、当日発表の機会が得られなかった方のために誌上発表の場を設けるという案については、編集委員会で最終的に決めてはどうかという意見が出された。発表資料とは別に資料集を作成するという案については、他の文献(特に海外の文献)から転載する図版・写真などの著作権の問題が生じるという意見や、古代アメリカの会員の研究は地域・分野が様々であるため資料集の作成は難しいのではないかという意見が出された。

 

8.その他懸案事項

寄贈図書について:寄贈された図書をどこに置くかというスペースの問題があるため、寄贈を受けるかどうかは今後の検討課題とした。

会員の活動報告掲載について:『会誌』では会員以外の人も見るものとして、1年間の活動のまとめを決まったフォームで掲載し、『会報』では会員向けの読み物としての性格を持たせ、調査のなかでの個人の体験や感想などを掲載することで区別することとした。

家族会員設置の要望について:別個の研究者としてのアイデンティティを持つべきなのでそのような制度は必要ないという意見が出された。会則の変更と関連することも考慮し、今後の検討課題とした。

 

『古代アメリカ』第5号編集委員会からのお知らせ

「会員の活動報告」のコーナーへの原稿執筆のお願い

 

 会誌『古代アメリカ』では第4号に引き続き会員の活動状況を掲載します。南北アメリカ大陸の先史学・考古学、及びその関連分野に関する会員の皆様の昨年(20011月から12月まで)の活動についてお教え下さい。なお、第5号からは個人、調査プロジェクトの活動の他に研究会活動に関する情報も募ることになりました。会員の皆様には情報の提供について、よろしくご協力のほどお願いいたします。なお詳細につきましては同封の「「会員の活動報告」のコーナーへの原稿執筆のお願い」をご参照下さい。

          『古代アメリカ』第5号編集委員会

 

会員からの投稿

(1)海外調査報告

リモンカルロ神殿発掘への参加:終盤の日記

 

   芝田幸一郎(東京大学大学院博士課程、ペルー・カトリカ大学留学中)

 まだ互いの顔を見分けることも難しい未明6時前、遺跡に着く。気温15℃。モンベルのナイロンパーカを羽織っているのだが、あたりを覆う霧雨のため、ひどく肌寒い。既に点呼を済ませた人夫達がめいめいの道具を手に取るころ、ようやく夜が開け始め、赤茶けた土漠に埋もれた神殿遺跡と、その中央広場に立つ2人の日本人(発掘主任:山形大学助教授坂井正人、発掘員:芝田)、1人のペルー人考古学者(発掘副主任:ブルーニン博物館Juan Martinez)、そして20人の人夫の姿があらわになる。

 このリモンカルロ遺跡は、約3000年前、ペルー北部ヘケテペケ川下流域に建造された神殿である。この国の考古学に関わる者の中には、その名を知る者が少なくない。ペルーのみならず諸外国の博物館にも、この遺跡近辺から盗掘されたという石皿や石製コップが飾られており、その滑らかな器面に刻まれた蜘蛛をモチーフとするクピスニケ様式の図像は、他に例を見ないものである。また30年前に地元の考古学者らが試掘調査した際、神殿を飾るジャガー人間の粘土レリーフが発見されたという報告がある。

 午前10時を回る頃になると、蒸発するように空から雲が消えてゆく。赤道に近いペルー北部の太陽は、まったく容赦がない。気温計の数値は目に見える速さで上がってゆき、しばし摂氏40℃に達する。と同時に空気は激しく乾燥し始め、20%前後、周囲の荒涼とした風景に相応しい湿度となる。人夫も考古学者もシャツ一枚になり、ときおり持参の水やジュースを飲んで乾きを癒す。

 発掘の終盤、30年前に一部発見された粘土レリーフが次々に掘り出されていった。ジャガー、蜘蛛、そしてコンドルなどが複雑に組み合わされた図像が描かれている。こうしたことはペルー考古学史上久々である。しかし発見の喜びは、すぐに大きなプレッシャーに変わる。この浮き彫りのつくられた、そして埋められた時期を確定しなくてはならない。強烈な陽射しの下で思考能力が低下する中、我々は複雑な立体パズルを解いていく。しかしピース自体が失われている部分も多い。30年ほど前、農地解放後の盗掘ラッシュが残した爪痕は深く、無数の盗掘坑がたくさんの情報を奪いとっているのである。市販のパズルとは異なり、現存のピースだけで答えが完成するのか最後までわからない。もしかしたら解けない問題かもしれないが、何とかなるのかもしれない。

午後になると、陽射しによって暖められた空気が動き始め、海からの強風が砂を巻き上げる。ふつうなら現場の作業をやめて、宿舎で出土品の整理を始めるころだが、今やのこり時間の少ない大詰めである。少なくとも、答えの出る問題か、そもそも解けない問題なのか、明らかにしなければならない。こうして我々は、再び朝のひんやりした空気がもどってくる日暮れまで、3000年かけてつくられたパズルを解き続けてゆく。

 

(2)出版物紹介

『写真でわかる謎への旅  メキシコ/マヤ&アステカ』 構成・写真:辻丸純一、文:土方美雄、雷鳥社、2001年、205頁、定価1,800円+税

土方美雄(フリーランス・ライター)

  昨年8月、写真家の辻丸純一さんとの共著で、雷鳥社より『写真でわかる謎への旅  メキシコ/マヤ&アステカ』を出しました。

 199912月に出した、私のメソアメリカ関係の前著『マヤ終焉  メソアメリカを歩く』(新評論刊、定価2,500円+税)はメキシコ、グァテマラ、ホンジュラス、そしてベリーズを巡る遺跡紀行でしたが、雷鳥社よりの新刊ではテーマをメキシコの遺跡に絞り、辻丸さんの撮り下しによる素晴らしい写真をもとに、私が本文を担当しました。内容的には大きく二部構成とし、前半の「A to Z」ではメキシコの主要遺跡への行き方やその見どころ等を、地図や写真をふんだんに使って解説し、後半の「謎への旅」では「オルメカ文明はメソアメリカ最古の文明か?」「トゥーラは『トルテカ帝国』の首都か?」等々、二六のテーマを設定し、見開き二頁でコラム風にまとめました。また、これ一冊で読者が旅行ガイドとしても使えるよう、「ひとり歩きのためのトラベルDATA」を巻末に付しました。もし何かの機会にお目に触れるようなことがあれば、内容的にご批判いただければ…と思います。

 

 

長谷川悦夫(東京大学大学院博士課程)

 とにかく写真が豊富で、きれいです。写真ながめるだけでもじゅうぶんたのしい。各遺跡の紹介も詳細かつ正確で、一般の旅行ガイドブックのようなおざなりの説明とはくらべものにならない。遺跡そのものだけではなく、交通手段、ホテル、食事、在外公館の連絡先なども記載されています。

 本文では「メソアメリカとは何か?」にはじまり「スペイン征服後のメソアメリカ世界」まで、26の章にわけて、オルメカ、テオティワカン、トルテカ、サポテカ、マヤなどについて概説してあります。あくまで旅行ガイドとして出版しているのでしょうが、予備知識がない方には、ちょっとしたメキシコの古代文明研究の入門書としてもおすすめです。著者である土方会員の現地調査・文献調査の成果が反映されているとおもいます。

 マヤについておおく紙面をさいていますが、メキシコの遺跡にかぎっているので、ティカル、コパンなどはとりあげられていません。

 ひとつだけケチをつけるとすると、本の題名の「謎への旅」というのがすこし気にかかる。アメリカ大陸の古代文明を「謎だ、ミステリーだ」というのは、前提として「アメリカ大陸の先住民は未開な民族で、彼らが高度な文明を築けるなんてヘンだ」という意識もあり、あきらかにオリエンタリズムのあらわれである。とはいえ、「売れてなんぼ」の世界に身をおいておられる方々は、ポリティカル・コレクトネスばかりをいってもいられないのはよくわかるし、ある程度の妥協はやむをえぬのかもしれません。本書の114ページを読めばわかるとおり、土方氏はこの問題をじゅうぶん意識しておられます。

題名はともかく、内容はしっかりしていて良心的だし、1,800円の価値はじゅうぶんにあるとおもいます。

 

(3)博物館収蔵品紹介

 

ハースト人類博物館蔵 ウーレ・コレクション

 

向井暁子(東海大学大学院博士課程前期

 ドイツ人考古学者マックス・ウーレは、1800年代末から1900年代初頭にかけてペルーで先スペイン期の遺跡の調査を行った。その調査で得られた資料の大部分がアメリカ合衆国カリフォルニア大学バークレー校のフィービー・アパーソン・ハースト人類博物館(Phoebe Apperson Hearst Museum of Anthropology)に保管されている。これがウーレ・コレクションである。このコレクションは土器・貝製品・染織物・木製品・金属製品・人骨・骨製品で構成されており、資料数は9,000点以上にのぼる。コレクションの概要と一部の資料は博物館の刊行物によって出版・公開されているが、大部分の資料は写真さえも未発表である。

 筆者は2000年の夏の約3ヶ月間、ウーレ・コレクションの中のF地点出土土器約500点を調査した。F地点はモチェ遺跡、ワカ・デ・ラ・ルナの西側に隣接する墓域である。ここでは約33基の墓が検出されており、これらはすべてモチェ期に属する。これらの墓からはモチェ期のT-U期からW期までの土器が出土しており、この地点がモチェ期に長期間利用されていたことを伺わせる。残念なことに、これらの墓どうしの切りあいや層位的上下関係は明らかでなく、また遺体と副葬品の位置関係や遺体の姿勢なども分らない。しかし、モチェ期の遺跡でこれほど長期間にわたる継続的利用が認められる事例は珍しく、一地点におけるモチェ土器の変遷を知る上で非常に重要な資料群である。また、資料はすべて墓ごとに取り上げられているため、一つの墓に副葬された土器のセットをも知ることができる。

 ウーレの発掘から1世紀以上を経た現在でも、毎年数人の研究者や学生が世界各国からウーレ・コレクションの調査のために博物館を訪れている。このことは、ウーレ・コレクションの重要性がまだ失われていないどころか、むしろ新たな発掘の進展に伴い、基準資料の一つとしてより重要性を増していることを示しているように思われる。

 

 

新入会員名簿

20011227日の役員会で以下の方々の入会が承認されました。現在、会員数は143名となっております。

乾 哲也井上則子川口祐子熊井茂行古賀優子佐々木毅鈴木真太郎高宮洋一羽田良夫矢島純子

 

 

事務局からのお知らせ

1.古代アメリカ研究会第7回総会・研究発表会の日程

   日時:200268日(土) 

  場所:東海大学湘南校舎(開催教室は未定)

発表者募集

 研究発表会での発表希望者は、題名と要旨(400字程度、ホームページに掲載)を事務局までe-mailまたはFaxでご連絡下さい。締切りは20013月末日です。なお、当日の発表は一人30分を予定しておりますが、発表者の人数等により変更になることがございます。ご了承下さい。

パネルディスカッション、分科会等の企画募集

研究発表会でのパネルディスカッションや分科会の企画を募集します。希望者は、企画の具体的な内容を事務局までe-mailまたはFaxでご連絡下さい。締切りは3月末日です。

 

2.HPワーキンググループ結成のお知らせ

大貫会長の希望により、HPの改善について検討するHPワーキンググループが2001714日に結成され、構成員として馬瀬智光、松本剛、八杉佳穂、中嶋直樹、向井暁子が任命されました。また、2001930日には民族学博物館で第一回HPワーキンググループが開かれ、HPの改善について話し合いが行われました。

 

3.会報への投稿募集

『会報』第12号への投稿を募集します。現地調査や博物館調査での体験やエピソード、各地で行われている研究会や講演会、展示会、出版物の紹介などの情報を研究会事務局までお寄せ下さい。文字数は400800字程度でお願いします。

 

4.会費納入のお願い

2001年度までの会費をまだ納入されていない方は、同封しました振り込み用紙にてお振込み下さい。

 

5.会員の織田拓男さんが転居先不明となっております。転居先をご存知の方は事務局までお知らせ下さい。

 

編集後記

今号から、会報のスタイルを変えてみましたが如何でしょうか。研究会の皆さまの国内外での活動を、もっともっとお伝えしたいと考えています。今回は、博物館・美術館所蔵コレクションの紹介という、新しいテーマに取り組んでみました。皆さまが知りたいこと、伝えたいことを遠慮なく教えて下さい。会報は、これまで以上に会員の交流の場としてあり続けたいと思います。図書紹介や近況報告なども、もっと掲載したいと考えております。さまざまなご意見、ご感想、ご報告など、お待ちしております。

             20022月 横山 玲子

 

〈写真提供〉

吉田晃章氏、土方美雄氏、Courtesy of the Phoebe Apperson Hearst Museum of Anthropology and the Regents of the University of California-photographed by Akiko Mukai, 4-3134

 

 

発行  古代アメリカ研究会

発行日 2001724

編集  横山玲子・向井暁子