古代アメリカ研究会会報No.5(発行1999年2月)

第4回総会・研究会開催海外最新情報1海外最新情報2 地域研究会紹介事務局からのお知らせ編集後記
 


古代アメリカ研究会第4回総会・研究会開催

●議題1:99年度総会,研究発表会について


 場所は東京大学駒場キャンパス,開催日は99年5月15日(土)に決定しました。 当日のプログラムは10時より役員会,11時より総会,13時より研究発表会を予定しています。 総会の内容につきましては,98年度決算,99年度予算の承認,活動報告,その他を考えております。
 研究発表会の発表者を募集します。希望される方は要旨(400字程度)を添えていただき,99年3月15日(月)までに事務局に連絡して下さい。 渡部のメール宛で結構です。発表時間は一人当たり20分程度を予定しております。 また,研究発表会の参加費として2,000円を徴収することにしております。
 研究発表会の後に懇親会を行ってみてはどうかとの意見がありましたので,事務幹事の渡部が東大生協で問い合わせをすることになりました。


海外最新情報1

 最近のアンデス考古学でホットな遺跡の紹介をしようと思う。
 昨年,3年ぶりにクスコを訪れた。 クスコの考古学というとやはり,インカ考古学というイメージが強いが,インカ以外で有名な遺跡といえば,ワリ文化のピキリャクタ遺跡が思い浮かぶであろう。 ところが,最近それに匹敵する大遺跡が調査されている。90年代初めから,クスコ大学のジュリーノ・サパタが手がけているワーロ遺跡群である。 クスコで彼に会って説明を受けるうちに,興奮が呼び起こされた。ピキリャクタに匹敵する広さで,しかも大部分が土の下に埋まっているという。 発掘を進めると,4メートルもの遺物包含層が確認できるという。 ワリの遺跡というと,地表に分厚い壁が縦横に走るイメージがあったが,その先入観が打ち砕かれた。 しかも出土する遺物は,ワリのものだけでなくティワナク様式,プカラ様式,そして現地様式の土器が混在するという。 これまた,聞いたこともない情報である。遺物を見せてもらい,また驚いたのである。
 半日の間,興奮しながら彼と話を続けた。丹念にメモをとり,再会を約束してタクシーに乗り込み帰った。 しかし,後日フィールドノートをタクシーの中に置き忘れたことが発覚し,後悔の念に襲われたのであった。
 なお,クスコ大学では20数人の人類学者がいる一方で,考古学者はたったの3人。そのうち先インカ期を専門にするのは彼一人。 学生も少なく図面の整理も彼が殆どやっているという。 さらに土器の分析を任せていたアメリカ人の女性考古学者が結婚してどこかへ行ってしまったと彼は嘆いていた。 本当に発掘調査は一人ではできないものだな,と感じさせるエピソードであった。

(東京大学大学院 渡部森哉)


海外最新情報2

「1998年度夏期現地調査の成果と課題」
 筆者は,1998年8月14日より10月9日までの約2ヶ月間,ホンジュラス共和国,ラ・エントラーダにおいて遺物の整理作業を中心として現地調査を行った。 その内容は,ラ・エントラーダ地域の土器編年再構成のための共同研究の一環として,筆者自身が97年12月まで行っていた土器実測の続きと, 95年〜96年の間にラス・ピラス遺跡で出土した彫刻をもとに杓谷氏によって作成された台帳記録の再確認,人物像,モンスター像に関係する石彫の写真再撮影, 遺構図と出土地点の比較検討などである。

●土器


調査内容
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 8月14日〜9月16日まで,先古典期中期から原古典期までに時期をしぼって計285点の土器実測を行った。 これらの土器は,ラ・エントラーダ地域における過去15年間の調査で得られた資料の一部である。 すべて口縁部破片であるが,報告書掲載にたえうるものだけを抜粋している。 また,個々の土器の時期決定は,C14年代測定による分析結果や他地域の土器とのクロスデイティングによって96年に行われた。
 9月17日〜9月21日まで,実測土器の写真撮影を行った。

今後の課題
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 現在のところ先古典期中期:8タイプ11バラエティー,先古典期後期〜原古典期:12タイプ16バラエティーが確認されている。 今回の作業に基づいて,ラ・エントラーダ地域の先古典期の土器に関する報告論文を中村氏と共同で執筆する予定である。

●石彫


調査内容
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 筆者自身が96年から参加したラス・ピラス遺跡調査団によって1995年〜97年までの調査で確認された全石彫を対象としている。 古典期後期に使用されたと考えられる建造物2番の最終居住段階の石彫を主に取り扱っているが, 周辺地域で発見された時期的にさかのぼる墓と共伴して確認されたものなども含んでいる。
 9月22日〜10月9日まで,石彫の写真再撮影と全石彫の補正された723点の石彫はすべてが同時期のものではなく, 時期差があるのではないか(すなわち,古い時期の石彫の再利用があったのではないか)という見通しをもっている。
 また,これらの石彫復元は他の2次センターでは例がないため,今後様々な遺跡が調査されていくうえで, 崩落した石彫を復元していくモデルとしての役割や,1次センター以外の小センター建造物において使用されたモチーフの指標としての役割, そして,モチーフによって表される観念的側面などの研究に非常に大きな手がかりとなる。

今後の課題
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 石彫の崩落位置と実際の壁面に装飾されていた位置との関係を調べる。 それぞれの石彫に関して,人物像に付随するものか,モンスター像に付随するものか,または単純に壁面を飾っていたものかの認定を行う。
 コパンの石彫と対比させながら細部の構成をみる。
 作業として,欠落している箇所や,誤認箇所などを修正した石彫台帳の完成,主要な石彫の実測図を作ること。
 96年9月にバーバラ・ファーシュ氏による暫定的な人物像,モンスター像の復元の試みがなされたが, これらは実際の出土状況などを考慮に入れて作成されたものではなく,氏の長年にわたる図像研究の経験や知識によるところが大きかった。 そこで以上のことをふまえて,実際の崩落状況,共伴状態などによって再度組立を行っていくことが必要不可欠である。

(埼玉大学大学院 上山雅代)


地域研究会紹介

 Capac _anという名称で研究会が発足したのは1998年4月のことです。 会の名称が決定するまでは、古代アメリカ文化を研究している金沢大学考古学講座の卒業生と学生の間で、 お互いの研究の進捗状況などを不定期的に情報交換する勉強会程度のものでした。 そういった経緯を経て、馬瀬智光氏(京都市埋蔵文化財調査センター勤務文化財保護技師)、筆者(金沢大学埋蔵文化財調査センター)、 鶴賀暁子氏(金沢大学考古学講座)が中心となり、古代アメリカにおける物質文化研究の俎上にのせられるような力量を養っていく目的で、 正式にCapac _anという研究会を発足する運びになりました。 今まで不定期であった会の開催を定期的、年4回とし、毎年年度末の3月には研究成果として会誌Las Culturas Ind_genasを発行することになりました。
 Capac _anの目指すところは、古代アメリカ文化の一側面を物質を中心に明らかにしていくことです。 人がたずさわったモノを主体に考えていくことに重きを置いています。 そして、Capac _anの言葉が示すように、メンバーそれぞれが、それぞれの道をつくり、それぞれの道をあゆむ過程で新しい発見をしていけたらと思っています。
 まだまだ、組織的にも、実力的にも未熟な研究会ですが、よろしくお願いいたします。

(岩田安之)


事務局からのお知らせ

●ニュース1:会員相互の所有文献の情報交換と入手手段について


 中南米の古代文化を研究する場合,最大の問題となるのは文献を揃えることです。 99年1月末現在,古代アメリカの会員数は90人を越え,海外で頻繁に研究している会員や,大量の蔵書を所有している会員もおられます。 そこで,Eメールによる連絡網を確立して,必要な文献を会員のみなさまから提示していただき,その所有の有無や入手方法を相互に連絡し合うことを提案します。 現段階では古代アメリカのホームページは開設されておりませんので,運営委員の馬瀬までEメールやその他の連絡手段により, 不足する文献の連絡を頂ければ可能な限り所有会員を探しだし,連絡することを考えております。


●ニュース2:ホームページについて


 この会報題5号を受け取られるすべての会員のみなさまにご協力をお願いします。 ホームページの開設・維持に予算が計上される予定ですが,ホームページ開設に詳しい方からの情報を頂きたいと考えております。 事務幹事の渡部または運営委員の馬瀬まで,連絡を頂けないでしょうか。


●ニュース3:会費について


まだ98年度の会費を納入しておられない方は,同封の振込用紙によりお振り込み下さい。
 振込先:00180−1−358812(郵便振替)


編集後記

 会員数も100人の大台に迫る勢いですが,会員の住所も,所属も異なるため, みなさんの期待されるような研究会の姿とはだいぶ違うものになっているかもしれません。 特に首都圏以外に居住する会員は,日々の研究成果を高め合う近隣の研究者にも事欠くかと存じます。 そこで我々役員はホームページを開設することで,みなさまの研究を支えるネットワークの核としてこの研究会を位置づけられたらと考えております。 インターネットの普及は情報の一極集中を是正することが可能です。共通のテーマを議論したり,相互の情報交換を進めていただけることを期待しています。 しかし,何分知識がないため,ホームページの開設が順調に進むかどうか? 次期総会で配布することになる住所録に積極的にメールアドレスを記していただき, ホームページ開設まで会員相互で連絡を取り合って頂けたらありがたいと考えております。 また,次期総会・研究会の後に懇親会も予定しておりますので,会員のみなさまの交流を進めて頂いたら幸いです。

(T.U)


 

発行 :古代アメリカ研究会
発行日:1998年2月28日
編集 :馬瀬智光・渡部森哉